闘争逃走反応(状態不安)とフリーダイビング|“力を抜けない”身体との向き合い方
- 尚輝 前山
- 5月7日
- 読了時間: 5分
フリーダイビングでは、
「もっとリラックスしたい」
「息を止めると焦ってしまう」
「深く行こうとすると身体が硬くなる」
そんな感覚を経験する人は少なくありません。
その背景には、闘争逃走反応(Fight or Flight Response) と呼ばれる、
人間が本能的に持っている防御反応が関係しています。

闘争逃走反応とは?
人間は危険を感じると、自律神経のうちの「交感神経」が優位になります。
すると身体は、
・心拍数上昇
・呼吸が浅く速くなる
・筋肉の緊張
・血圧上昇
・「危険だ」と感じる不安反応
を引き起こします。
これは本来、
「戦うか、逃げるか」
を瞬時に判断するための生存本能です。
しかしフリーダイビングでは、この反応が強すぎると逆に
パフォーマンスを下げてしまいます。
フリーダイビングと不安の関係
特に、もともと不安を感じやすい傾向(特性不安)が強い人は、
・深く潜ること
・息を止めること
・圧力変化
・暗さや閉塞感
に対して無意識に恐怖を感じやすくなります。
すると身体は、
・筋緊張
・力み
・心拍数上昇
・酸素消費量増加
を起こしやすくなります。
つまり、
「リラックスしたいのに力が抜けない」
という状態が起こるのです。
CO₂耐性と不安反応の関係
フリーダイビングで感じる“苦しさ”の大きな原因は、
酸素不足ではなくCO₂(二酸化炭素)の上昇によるものです。
CO₂が増えると脳は危険信号を出し、闘争逃走反応を引き起こします。
つまり、
CO₂耐性が低い
↓
息苦しさを強く感じる
↓
不安・焦りが増える
↓
心拍数上昇、筋緊張
↓
さらに酸素消費が増える
という悪循環が起こります。
だからこそフリーダイビングでは、
「息を我慢する」
のではなく、
「CO₂が増えてもリラックスを保つ能力」
が重要になります。
呼吸が浅い人ほど、不安を感じやすい
現代人はストレスやデスクワークによって、
呼吸が浅くなりやすい傾向があります。
特に、
・胸だけで呼吸している
・肩が上がる呼吸
・常に交感神経優位
の状態では、身体は常に軽い“警戒モード”になります。
フリーダイビングでは、
・横隔膜を使った深い呼吸
・長い吐く呼吸
・ゆっくりした呼吸リズム
によって副交感神経が働きやすくなり、
リラックス状態へ入りやすくなります。
フリーダイビングで重要なのは「頑張る」ではなく「整える」
フリーダイビングは、単純に根性で息を止めるスポーツではありません。
むしろ重要なのは、
・自律神経を整えること
・身体の緊張を抜くこと
・酸素を効率よく使うこと
・安心した状態を身体に覚えさせること
です。
そのために重要なのが、陸上でのコンディショニングです。
不安低減に効果的な運動とは?
研究では、
レジスタンスエクササイズ(筋力トレーニング)柔軟性エクササイズ(ストレッチ)有酸素運動
これらを組み合わせて行ったグループは、
有酸素運動のみを行ったグループと比較して、
うつ・不安の低減効果が有意に高かったと報告されています。
つまり、
「ただ走るだけ」
ではなく、
・筋肉を適切に使う
・柔軟性を高める
・呼吸を深める
・循環機能を高める
ことを総合的に行うことが、メンタル面にも大きく影響するのです。
フリーダイバーにおすすめの習慣
① 有酸素運動
ウォーキング、軽いランニング、バイクなど。
目的は、
・心肺機能向上
・副交感神経を働かせやすくする
・回復力向上
・安静時心拍数低下
です。
結果として、水中でもリラックスしやすくなります。
② ストレッチ・柔軟性エクササイズ
身体が硬いと、呼吸も浅くなります。
特に、
・胸郭
・横隔膜周辺
・股関節
・肩周り
の柔軟性は重要です。
身体が柔らかくなることで、
・呼吸のしやすさ
・脱力感
・水中姿勢
も変わってきます。
③ 軽い筋力トレーニング
筋トレは「追い込む」だけではありません。
正しく行うことで、
・姿勢改善
・呼吸効率向上
・身体コントロール向上
・安心感
にもつながります。
特に体幹の安定性は、フリーダイビング中の無駄な力みを減らします。
「安全だ」と脳に覚えさせることが重要
人間の脳は、未知のものに対して恐怖を感じます。
そのため、
・いきなり深く潜る
・無理に長く息を止める
よりも、
「安全な成功体験を積み重ねること」
が非常に重要です。
例えば、
・浅い水深でリラックス練習
・短時間のスタティック
・落ち着いた呼吸練習
・ゆっくりした潜降練習
を繰り返すことで、
脳が「これは危険ではない」と学習していきます。
水中では“メンタル”がそのまま身体に現れる
フリーダイビングでは、
焦り
↓
筋緊張
↓
酸素消費増加
↓
さらに苦しくなる
という流れが起こります。
逆に、
安心感
↓
脱力
↓
酸素消費減少
↓
さらにリラックスできる
という良い循環も生まれます。
つまりフリーダイビングは、
「身体のスポーツ」であると同時に、
「神経系を整えるスポーツ」
でもあるのです。
海で変わる前に、まず陸で整える
フリーダイビングは、海のスポーツでありながら、
実は「日常の状態」がそのまま水中に現れます。
普段からストレスが強い状態だと、
水中でも身体は無意識に緊張します。
だからこそ、
・呼吸
・ストレッチ
・運動
・睡眠
・日常のリラックス習慣
がとても重要になります。
日常生活にもつながるフリーダイビング
フリーダイビングを通して学べるのは、単に“深く潜る技術”だけではありません。
・呼吸を整える
・緊張に気づく
・力を抜く
・不安と向き合う
・今この瞬間に集中する
これらは、日常生活のストレスマネジメントにも大きくつながります。
だからこそフリーダイビングは、
「海の趣味」
ではなく、
“身体と心を整えるウェルネス”
としての側面も持っているのです。
まとめ
フリーダイビングにおいて、不安や恐怖を感じることは自然な反応です。
大切なのは、それを無理に抑え込むことではなく、
「身体と神経を整えること」。
有酸素運動、ストレッチ、筋力トレーニングを組み合わせながら、
少しずつ身体に“安心”を覚えさせていくことで、
海の中でも、より自然にリラックスできるようになります。
「陸で整え、海で解放する」
日常のコンディショニングが、フリーダイビングの感覚を大きく変えていきます。



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